お題.「白飛び・黒潰れ耐性(ダイナミックレンジ)」はどうか?
検証結果.F50fdのダイナミックレンジは、
「F31fd(先代機)より広く」なっているようです。
検証の前に、画質検証の際に注意していることがあります。
よく画質の良し悪しが話し合われますが、「画質の良い写真」になるための一番の条件は、
天候や光の状況です。道具(デジカメ)の違いは「それ(天候・光)と比べてしまうと微々たるもの」
なので、違う日に撮った写真で(同じ場所でも)、デジカメの画質の優劣をつけることは不可能です。
ですので、1枚の白飛びや黒潰れてしている写真を見て「このカメラはダイナミックレンジが低い」
「このカメラはノイズが多い」等と断言してしまっている方をたまに見かけますが、
それは非常に危険(全くの嘘情報を流してしまう可能性もあります)です。
残念ながらプロのライターの方でも、「全然違う光の状況で撮った写真」をわざわざ
「等倍トリミングまでして、全機種並べてノイズ比較」し、誤った情報を
流してしまっている方(意図的な情報操作?)もいます。
ということで、画質を比較する場合は、「ほぼ同じ日時に、同じ条件で写した写真どうし」で
比較しなければ意味がありません。
(※画像のサイズも、自分の必要なサイズに統一して比較することが大事です)
デジカメWatchのこのページは、「ほぼ同じ日時に写した写真」があり、今回の検証にも
引用させていただきました。
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/review/2007/09/19/7036.html
(クリックすると新しいウィンドウで開かれます)
それでは検証に入ります。まず、上記ページ(デジカメWatch)の「仙台七夕(ISO400)」の
F50(6M)とF31の写真を比べてみてください。
(両者共にISO400の1/80秒で全く同じ条件。撮影時刻の差も34秒だけの違い)
白飛びしているのは、両機種ともに、左下の「蛍光灯」と、
真ん中より少し下のほうに隠れている「蛍光式の時計」です。(ヒストグラムで確認)
差が出ている、真ん中少し下の
「蛍光式の時計」のほうに注目してください。
F31はいかにもな白飛びです(ヒストグラムでも、ある段階から急に白に変わってしまっている
ことが確認できます)。いっぽうのF50は、なだらかに白へ向かっていて、F31よりも
いくぶん粘り強い諧調表現が出来ています。(並べて比較されているソニーのW200も優秀です)
これは推測になりますが、「F31が白飛びに弱い原因」は、F31の絵作りの
傾向(解像度よりもノイズレスを目指す)が原因と思われます。
ダイナミックレンジを狭くして彩度・コントラストを上げれば(CCDの実露光時間を少
し早めに終わらせてしまうなどの方法があります)、ノイズレス傾向の画像を作れます。
しかし、そのぶん白飛びは早く始まってしまうことになります。
※「F31が白飛びに弱い」と書いたのは、あくまでもF50fdやW200との比較です。
その他大勢と比べると強いほうだと思います。
さて、「白飛び」に関しては、F50に軍配が上がりました。「黒潰れ」に関してはどうでしょうか。
基本的に、「白飛びに強い」ということは
「黒潰れに関しても強い」と言えます。
なぜなら、白飛びに強ければ
「意識的にシャッター速度を遅くして明るく撮ることができる」
からです。その傾向が、上記リンク先(デジカメWatch)ページの
「料理(ISO400)」の
写真でも出ていますので、ご覧下さい。
まず
「料理(ISO400)」の写真のシャッタースピードに注目してください。
F31では「1/20秒」なのですが、F50は白飛びに強くなったぶんか「1/18秒」で撮られて
います(おそらくオートAE撮影)。そのため、F50では右上の方にある
「なすの漬物の頭」と
その左上にある
「黒いスプーン?」で黒潰れが軽減されていて、
なすやスプーンの丸みのある表現が、うまく出来ています。
「自転車(ISO800)」の写真(F50の6Mの写真は手ぶれしていますので12Mのほうを参照)も、
シャッタースピードにその傾向が現れていて、F50のほうが遅めの「1/28秒」。F31は「1/30秒」と
なっています。ここではわずかな差だったので、黒潰れ気味の部分は両者差はありませんが、
「白い自転車」の白飛び部分に関しては、シャッタースピードが遅い(露光時間が長い)にも
かかわらず、
F50のほうが軽減(=白の諧調が豊か)されています(ヒストグラムでも確認)。
F50はF31と比べて「ダイナミックレンジを大切にした(ノイズが出てしまうのを
覚悟でもコントラストがやや低めの)絵作り」を目指していると感じます。
(F30よりも前のFUJI機は、この傾向だったと思います)
それから、F50やF31等のFUJI機には
「クロームモード撮影」がありますが、
「クロームモード」はコントラストを上げるために「ダイナミックレンジが狭くなる」ので、
明暗差があると黒潰れ気味になる弱点があります。ですので、
明暗差が激しい場面では、クロームではなくノーマルで撮ったほうが失敗が少ないです。
と、前機種と後機種を比較(CCD製造技術や画像処理技術の進歩検証)してみましたが、
大きすぎるほどの差はなく、私が前まで使っていた
「ダイナミックレンジが広いF700」でも、
曇り空や日光の当たった白いものなどは簡単に白飛びしてしまうので、
やっぱり一番大事なのは
「光の状況を考えた撮影」になると思います。
それから、「ダイナミックレンジの広さを利用した絵作り」にすることは、同時に
「コントラストの低い絵作り(平面的)」になるので、その作画バランスも難しい(無理な部分は
無理せず白飛びさせてしまうことで、コントラストの高い絵作りをしたほうが良い結果になる
場面も少なくない)のだと思います。
自分的には今のところ、F50fdのダイナミックレンジでバランスが良く
ほとんど不便は感じませんが、必要な場面で「コントラスト低」の設定がすぐに出来て、
その設定でもしっかり色が載ってくれるようなコンパクトデジカメ(小さいの)が、
今後発売されることを楽しみにしています。
※諧調を荒くすれば、見かけ上のダイナミックレンジを広げることは簡単です。
白飛びしていないとともに、諧調もしっかりしていることが大切です。
この場面では、もっと広いダイナミックレンジが欲しい!!と感じた写真
「公園の丘の上から」(ISO100)…「曇り時々晴れ」の難しい天気で、
雲の真ん中あたりと右端のほうで白飛びしています。
グリーンと人を明るく写したかったので、空を隠し気味でAEロックして、
空は白く飛んでもという気持ちで撮りました。
F700なら、空も生かせたかもしれませんが、普通のCCDで、
雲から漏れる強めの光をカバーするのは大変かもしれません。
「渋い黒猫」(ISO400)…左上に「白猫」も見切れていますが、白飛び気味です。
黒猫と白猫、両方の毛並みを撮りたいシーンは、デジタルカメラ最大のピンチ場面
のひとつです。普通のデジカメだと難しい場面で、一眼タイプでも難しいようです。
ちなみに、F50fdでも、このぐらい(ISO400で撮影)は撮れました。
(両者の表情はしっかり撮れているので、スナップとしては充分と思います)
F50fdのダイナミックレンジ広いじゃん!!と感じた写真
「ハトと飛行機」(ISO100)…白の諧調から黒の微妙な諧調、
そして鳩のウンコの諧調までキッチリと再現されました。
(お食事中の方すいません)
「夕刻の橋」(ISO100)…自分が撮った中で一番好きな写真です。
空の光が漏れている所にわずかな白飛びはありますが、
雰囲気を壊さない範囲に収まりました。
半分は暗部で構成されていますが、ここまで描写してくれて感謝です。