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PCエンジンエミュレータ「Ootake」を製作しています中村です。
近年に復刻発売されているレトロゲーム、特に古いアーケードゲームの復刻版は
ピクセルアスペクト比(キャラクターの縦横比)が無視または誤った方法で決められて
しまっている作品も多く、せっかくの名作の良さが伝わりきらない状況が続いています。
「グラディウスII」は、ドットバイドット表示こそデザイナーさんの意図した世界
幾度も復刻作品として移植されてきた名作「グラディウスII」。
近年の移植作である「アーケードアーカイブス版グラディウスII」「アーケードクラシックス
アニバーサリーコレクション」「グラディウス オリジンコレクション」の3つの復刻版は、いずれもデフォルト設定では「グラディウスIIゲーム画面320x224ピクセルを
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の仮想テレビ画面いっぱいに引き伸ばして表示」。その結果「ピクセルは縦1.07倍に引き伸ばされる(キャラデザインが縦長に見える)」という表示方式を採用している。
これは明らかに正しくない。まず実際にプレイした時に1面の人工太陽が縦に痩せすぎてることに気がつく人は気がつく。
基板を実際に持っている方なら、起動時に表示される正方形のテストグリッドパターン(白い格子状のパターン)がその表示方式では正方形にならずに、だいぶ縦長になってしまうことに気がつくだろう。
↓オリジンコレクションのデフォルト表示。テストグリッドが縦長になってしまっている。

出典:『グラディウス オリジン コレクション』(© Konami
Digital Entertainment)
↓オリジンコレクションのドットバイドット設定での表示。テストグリッドが正方形になった。

出典:『グラディウス オリジン コレクション』(© Konami
Digital Entertainment)
この白い網目で表示されるテストグリッドこそ、ゲーセンの店員さんがブラウン管でそのゲームのピクセルアスペクト比を調整するための決め手。店員さんがこのテスト画像が正方形になるように合わせることで一番自然な見栄え(メーカーの意図)に調整していたのだ。
「グラディウスII」のテストグリッドは黒い正方形が14x14ピクセルで表示されており、縦と横が同じピクセル数での正方形。つまりメーカーは「1ピクセルが正方ピクセルに見えるように」ブラウン管を調整することを推奨していたと思われる。
※これは、現行PCやゲーム機で表示するならドットバイドットの表示に等しくなる
実際にそのように調整すると、1面の人工太陽も痩せすぎず不自然さは無くなる。
人工太陽がちゃんと丸みを帯びているだけでも結構大きくプレイ感は変わってくる。人工太陽の見た目の迫力が違うのだ。当然、プレイ後の楽しかった感・感想も変わってくるだろう。
↓オリジンコレクションのデフォルト表示。人工太陽が縦長になってしまっている。

出典:『グラディウス オリジン コレクション』(© Konami
Digital Entertainment)
↓オリジンコレクションのドットバイドット表示。人工太陽がちゃんと丸くなった。

出典:『グラディウス オリジン コレクション』(©
Konami Digital Entertainment)
グラディウスIIはドットバイドットが正しいとする決定的な根拠はもうひとつある。
それは、ステージ6のボス「カバード・コア」だ。グラディウスIIのキャラクターデザインをされた方の資料を見ると、その「カバード・コア」は正円の比率で描かれていたのだ。
↓デザイナーさんの開発資料。6面ボス「カバード・コア」のカバーは正円状に回転する。

出典:『グラディウス オリジン コレクション』(© Konami
Digital Entertainment)
↓ドットバイドットの設定なら、ゲーム上でもしっかりとカバーが正円状に回転する。

出典:『グラディウス オリジン コレクション』(© Konami
Digital Entertainment)
現在も購入できる3種のグラディウスIIのデフォルトでは、その「カバード・コア」は横に少し圧縮されていて縦長になってしまっていてカバーが正円状に回る演出からズレしてしまっている。
過去に発売されたPCエンジン版(ピクセル比横1.14倍)、プレイステーション版(ピクセル比横0.80倍)、セガサターン版(ピクセル比横0.91倍)も、ハードスペックの都合上、結構正方ピクセルからはズレてしまっていた。
ピクセルの縦横比が違っても、ゲームを楽しめるか楽しめないかで言うともちろんそれ以外の凄い内容を持った名作だから当然楽しめる。でもめっちゃその作品を好きになるかどうかにはピクセルの縦横比が合っていない場合、大きなハンデになってしまっていると個人的には考えています。
もうひとつ、今回画像を引用させていただいた「グラディウス オリジン
コレクション」は効果音の鳴り方が気になりました。特にグラIIのリップルレーザーは本来気持ちいい音が鳴りますが、正直、今回は終始耳に気持ちの良くないプレイ感でした。改善を希望します。
また、音量を100より下げると音圧まで大きく落ちてしまう点も気になりました。音量設定でデフォルトの70から100に上げることで自分は対処しました。しかしながら、多くの資料やサウンドギャラリーが収録されている点は本当に素晴らしいです。
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「ゼビウス」のアンドアジェネシスは、正方形こそデザイナーさんの意図した世界
もうひとつ作品を見ていこう。大きなボスキャラも登場しその世界を知らしめた名作「ゼビウス」。
近年の移植作である「アーケードアーカイブス版ゼビウス」は、デフォルト設定では「ゼビウスゲーム画面224x288ピクセルを
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の仮想縦置きテレビ画面いっぱいに引き伸ばして表示」。その結果「ピクセルは横0.96倍に圧縮される(キャラデザインが縦長に見える)」という表示方式を採用している。
これは誤差は大きくないのであまり気づかれないかもしれない。しかしゼビウス好きならアンドアジェネシスと対峙した時に、あんた正方形じゃなかったんかいと気がつく人は気がつく。
これも基板を実際に持っている方なら、起動時に表示される正方形のテストグリッドパターン(白い格子状のパターン)がその表示方式では正方形にならずに、少し縦長になってしまうことに気がつくだろう。
↓左が横を0.96倍に加工した画像(アケアカ版のデフォルト相当)。右がドットバイドット
 
出典:『Windows95/98版 ゼビウス(メーカー:メディアカイト)』(©
Bandai Namco Entertainment Inc.)
「ゼビウス」のテストグリッドも黒い正方形が14x14ピクセルで表示されており、縦と横が同じピクセル数での正方形。つまりメーカーは「1ピクセルが正方ピクセルに見えるように」ブラウン管を調整することを推奨していたと思われる。
※これは、現行PCやゲーム機で表示するならドットバイドットの表示に等しくなる
実際にそのように調整すると、アンドアジェネシスはしっかり正方形になり俺達の記憶にも合致する。アンドアジェネシスは正方形だからこその佇み(たたずみ)があるのだ。特にレトロPCで移植ものを遊んだ方は昔を思い出し、プレイ後の楽しかった感・感想も変わってくるだろう。
↓左が横を0.96倍に加工した画像(アケアカ版のデフォルト相当)。右がドットバイドット
 
出典:『Windows95/98版
ゼビウス(メーカー:メディアカイト)』(© Bandai Namco Entertainment Inc.)
ゼビウスはドットバイドットが正しいとする決定的な根拠はもうひとつある。
アンドアジェネシスはプラモデルやステッカーなどでも商品展開されていてそれはしっかりと正方形なのだ。
過去に発売されたPCエンジン版やファミコン版(ピクセル比横1.14倍)は、ハードスペックの都合上、正方形からはだいぶズレてしまっていた。(※1月4日更新。初出にてファミコン版は調整されていたと記載していましたがPCエンジン版と同じく横1.14倍でしたので訂正いたしました)
繰り返しになりますが、ピクセルの縦横比が違っても、ゲームを楽しめるか楽しめないかで言うともちろんそれ以外の凄い内容を持った名作だから当然楽しめる。でもめっちゃその作品を好きになるかどうかにはピクセルの縦横比が合っていない場合大きなハンデになってしまっていると個人的には考えています。
これでいいやになってしまっている原因は、アーケード基板のエミュレーターであるMAMEのデフォルトが同じようなアスペクト比計算になっていることも一因にあるのかもしれない。他もこうだからうちも大丈夫だろうという事例が近年多くなってしまっている気がします。
アケアカ版もオリジンコレクション版も、設定でドットバイドットにすることも出来るので致命的ではないのですが、多くの方はまずデフォルトでプレイすることでしょう。
じゃあ実際に正しいピクセルアスペクト比の求め方というのは存在するのか? 次の章で考えていきます。 |
何を基準として正しいピクセルアスペクト比とするか
【1】.「起動時やテストモードでテストグリッドパターンが表示されるゲーム」は、それを正方形に合わせればまず間違いない
テストグリッドパターンをわざわざ表示してくれるということは「これを正方形に合わせてね」というメーカーからの記しですので、当時ゲーセンの店員さんはこの白い格子状のテストグリッドパターンを見ながら縦横比を調整していたとのことです。
そのテストグリッドパターンの正方形データの、縦と横のピクセル数が同じ場合は、ドットバイドットな映りを推奨されていますので、そのゲームを復刻移植する場合もドットバイドットが最適と決まります。(初代グラディウス、グラディウスII、ゼビウスなど)
ファミコンやPCエンジン時代の家庭用ゲーム機は、コストの関係で正方画素出力ではありませんでしたが、コストが掛けられるアーケード基板に関しては当時から1ピクセルを正方画素として表示(ドットバイドット)されるように設計された基板も多かったようです。
テストグリッドパターンが表示されないゲームの場合は、次の方法でピクセルアスペクト比を決めることになります。
【2】.ブラウン管モニタを「標準的な設定」にしてアーケード基板に繋ぎ、調整せずそのまま映ったピクセルアスペクト比を正解とする
ここで言う「標準的な設定」とは「テレビ放送を映した時に縦横に歪みのない状態」のことです。多くのブラウン管モニタはこの状態で出荷されていたはずです。
テストグリッドパターンが無い場合、他に指標がないので、この状態で映った映像のピクセルアスペクト比を正解と決めることになります。
【3】.ゲーセンの店員さんは、縦横比を保ったままなるべく大きく映るように調整していた
ゲーセンの店員さんは、こうして縦横比が決まったあと、見栄えが良くなるようにできるだけ大きく映るように調整していたはずです。しかし、この時店員さんのさじ加減で縦横比が微妙に変わってしまうことはよくあったのだと思います。
店員さんによっては、最初から縦横比など構わずに約4:3のテレビ画面いっぱいまで広げて調整していた人もいたかもしれません。実はこの誤ったやり方をしてしまっているのが、MAME(アーケード基板のエミュレーター)のアスペクト比の決め方なのです。MAMEだけでなく、拙作Ootakeの初期バージョンもそのやり方で4:3いっぱいに広げ過ぎていましたし、今でもいくつかのエミュレーターでその方法が行われています。
なぜ画面いっぱいまで広げてしまうのが正しくないかと言うと、多くのゲーム基板では上下か左右に黒帯部分(非アクティブな表示領域)があるのです。その部分まで埋まるように全部広げてしまうことで、縦横比が歪んでしまう結果となります。
復刻版開発のメーカーさんも、その誤った方法をお手本としてしまっているため、正しくないピクセルアスペクト比がデフォルト状態になったまま販売されてしまっています。
【4】.【2】で説明したやり方で決められるピクセルアスペクト比は、実際にアーケード基板を繋いでみなくてもアーケード基板のスペックの値を見れば計算できる
復刻版開発のメーカーさんには、是非実際に【2】のやり方での確かめは行っていただきたいですが、実際に繋がなくてもその結果は計算でも求められます。実際に移植で使う場合は、その計算上のデータの利用が精度的に最適と思われます。
次の章では、具体的にどのような計算で正しいピクセルアスペクト比が求められるかを考えていきます。 |
正しいピクセルアスペクト比の計算方法
【1】.ATSC(米国のテレビ放送規格委員会)がNTSCのデジタル化に際して定義した値
「ピクセルクロック6.136MHz」を基準とし、ピクセルアスペクト比を計算する
ブラウン管時代のピクセルアスペクト比の唯一の基準はここにあります。テレビ放送の縦横比が歪んでいない状態のテレビ画面に、「水平周波数15.734kHz、垂直周波数59.94Hz、ピクセルクロック6.136MHz」で映像出力された画像の1ピクセルが必ず1:1の正方ピクセルになるという定義です。(定義される前も、実測すると
6.136MHz に非常に近かったと考えられます)
上記の説明もわかりにくいかと思いますので、実際にどのように計算するかを記載します。
【2】.どのような式で計算をするのか
昔のアーケード基板や家庭用ゲーム機は、テレビ放送を映すためのブラウン管(NTSC規格)で映せるように開発されていました。そのため、出力される信号は、「水平周波数15.734kHz、垂直周波数59.94Hz」と同じか非常に近い値になっています。
NTSC規格のブラウン管は縦のライン数は262.5本(ノンインターレース)で固定されています。ですので、「アーケード基板や家庭用ゲーム機それぞれによって変化するのは、横の解像度だけ」となります。
その横の解像度が決まる要素は「ピクセルクロック」だけです。
ピクセルクロックとは、ピクセルを描くためのカーソルの速さ(移動ではなく仕事の速さ)のようなものです。この値が大きければ(=速ければ)より細かくピクセルを描くことが出来る(解像度が高くなる)というわけです。
ピクセルクロックから、そのハードのピクセルアスペクト比をすぐに計算できます。
その計算方法は次の通りです。
6.136 ÷
【計算したいアーケード基板のピクセルクロック】
この計算結果が、ピクセルアスペクト比の値となります。
値は、「そのハードの“1ピクセル”が、ATSCが想定した正方ピクセル(6.136MHz時)に対してどれだけ縦長か横長か」を表しています。
・1.0未満 → 横幅が狭い縦長ドット ・1.0より大きい → 横幅が広い横長ドット
これは「ピクセルクロックが大きい(速い)ほど、1ラインにより多くのピクセルを詰め込めるため、1ピクセルの横幅が細くなる」という理屈です。
各アーケード基板やゲーム機のピクセルクロックはMAMEのソースファイルや、下記のサイトなどで調べられます。
Pin Eight氏(2000年代初期から存在する“古参の映像技術サイト”の管理者)のページ
Dot clock rates ※Dot
Clock = ピクセルクロックです。
実際にこの方法でPCエンジンのピクセルアスペクト比を計算すると、実機のモニタでの表示やOotake(Real
Stretched)やMednafenの表示とも非常に良く一致します。
Pin
Eight氏の表は一次資料ではありませんが、実機の動作やMAMEのソースコードに基づいた値が整理されており、ファミコンの 8:7
など実際に多くのエミュレーターで採用されている値も含まれています。技術情報を公開する人が少なくなってきた今、本当にありがたいです。
また、正確な水平周波数と水平総ピクセル数(黒帯部分も含めたピクセル数)からも「ピクセルクロック」を割り出すことが可能です。
次の章で、初代グラディウス、グラディウスII、ゼビウスのアーケード基板のピクセルアスペクト比を実際に計算してみます。 |
「グラディウス」「グラディウスII」「ゼビウス」のピクセルアスペクト比の計算
【1】.「グラディウス」の基板のピクセルアスペクト比を計算
・ピクセルクロック「6.14MHz」
6.136
÷ 6.14 = 0.9993
ピクセルアスペクト比は
「0.9993」(正方ピクセルから約0.07%だけ横幅が短い、実質正方ピクセル)
結果…0.07%だけの誤差なので正方ピクセルと見分けはつかず、実質正方ピクセルと言っていい。初代グラディウスは起動時にテストグリッドパターンが表示されるので、それが正方形に見えるように店員さんが調整ツマミでブラウン管個体差の誤差を合わせていたと思われます。
テストグリッド表示上の黒い正方形が14x14ピクセル(この時点ですでに正方形)で表示されるため、現代の正方ピクセル表示のゲーム機やPCに移植する場合は、ドットバイドットがメーカー推奨だと考えられます。
【2】.「グラディウスII」の基板のピクセルアスペクト比を計算
・ピクセルクロック「6.14MHz」
6.136
÷ 6.14 = 0.9993
ピクセルアスペクト比は
「0.9993」(正方ピクセルから約0.07%だけ横幅が短い、実質正方ピクセル)
結果…実は初代グラディウスと同じピクセルクロックなので、ピクセルアスペクト比も全く一緒です。テストグリッド表示も一緒で、ドットバイドットがメーカー推奨だと考えられます。
グラディウスII(横320ピクセル表示)は、初代グラディウス(横256ピクセル表示)と比べて左右の表示領域が広がっています。初代で左右の黒帯になっていた部分が表示領域になった形です。
ここで重要なのは、横表示ピクセル数(「解像度」としてスペック表には表記)が増えても「1ピクセルの縦横比は初代から変わっていない」
という点です。ピクセルアスペクト比は、ピクセル数ではなくピクセルクロックで決まるのです。
【3】.「ゼビウス」の基板のピクセルアスペクト比を計算
・ピクセルクロック「6.14MHz」
6.136
÷ 6.14 = 0.9993
ピクセルアスペクト比は
「0.9993」(正方ピクセルから約0.07%だけ横幅が短い、実質正方ピクセル)
結果…実はゼビウスもグラディウスと同じピクセルクロック6.14MHzなので、ピクセルアスペクト比も一緒です。テストグリッドが表示されるのも一緒で、ドットバイドットがメーカー推奨だと考えられます。
家庭用ゲーム機は、コストの制約からドットバイドット表示にならないハードが多かったのですが、アーケード基板ではドットバイドットに近い表示のものが多くを占めています。
基板ハードをドットバイドット表示にすることで、グラフィックデザイナーさんが当時の高性能コンピュータでペイント作業をしやすかったことは大きかったのだと思います。
以上です。アーケード基板だけでなく、同じ方法で家庭用ゲーム機のピクセルアスペクト比(PAR)も、求めることが出来ます。
機会がありましたら、他のゲーム、特殊なものについてなども今後紹介していきます。 |
2026.1.3 Written by Kitao Nakamura.
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